~ フィッシングとは実在する組織を騙って、ユーザネーム、パスワード、アカウントID、ATMの暗証番号、クレジットカード番号といった個人情報を詐取する行為です ~

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月次報告書

2024/02 フィッシング報告状況

2024年03月15日

フィッシング報告件数

2024 年 2 月にフィッシング対策協議会に寄せられたフィッシング報告件数 (海外含む) は、前月より 30,325 件減少し、55,502 件となりました。

フィッシングサイトの URL 件数

2024 年 2 月のフィッシングサイトの URL 件数 (重複なし) は、前月より 4,502 件増加し、23,988 件となりました。

フィッシングに悪用されたブランド件数

2024 年 2 月のフィッシングに悪用されたブランド件数 (海外含む) は、前月より 4 件減少し、70 件となりました。

総評

2024 年 2 月のフィッシング報告件数は 55,502 件となり、2024 年 1 月と比較すると 30,325 件、約 35.3 % 減少しました。
イオンカードをかたるフィッシングの報告が急増し、報告数全体の約 25.7 % となりました。次いで報告が多かったAmazon、三井住友カード、セゾンカード、マスターカードをかたるフィッシングの報告をあわせると、全体の約 61.3 % を占めました。また 1,000 件以上の大量の報告を受領したブランドは 13 ブランドとなり、これらを合わせると全体の約 84.3 % を占めました。

分野別では、報告数全体に対する割合はクレジット・信販系 約 53.4 %、EC 系 約 17.6 %、金融系 約 9.1 %、オンラインサービス系 約 4.5 %、公共サービス系 約 3.0 %、交通系 約 2.9 % となり、クレジット・信販系ブランドの割合が急増しましたが、報告数は前月より減少しています。また、金融系ブランドは割合、報告数ともに増加傾向となりました。
フィッシングに悪用されたブランドは 70 ブランドとなり、クレジット・信販系 15 ブランド、金融系 11 ブランド、通信事業者・メールサービス系 8 ブランド、オンラインサービス系 6 ブランドとなりました。

SMS から誘導されるフィッシング (スミッシング) については、前月に引き続き、宅配便関連の不在通知を装う文面から Apple をかたるフィッシングサイトへ誘導するタイプの報告が多く、メッセージ文面も不在通知に関するキーワードを組みあわせて作成したと思われる、多くの文面が確認されています。また、モバイルキャリアをかたる文面の報告も増加しました。

2024 年 2 月のフィッシングサイトの URL 件数は 23,988 件となり、2024 年 1 月と比較すると 4,502 件増加しました。
報告全体の URL(重複あり)の TLD 別では .com が約 38.5 %、次いで .dev 約 22.1 %、.cn 約 11.6 %、.ru 約 7.5 %、.ly 約 6.7 %、.top 約3.8%、.id 約 3.1% となり、前月と比較し .dev ドメイン名の悪用が急増しました。 フィッシングサイトの URL 件数(重複なし)の増加の要因は、前月に引き続き、短縮 URL や Cloudflare Workers で付与できるサブドメイン名を、フィッシングメールに記載する「使い捨て」リダイレクト用 URL として悪用するケースが多く、URL 件数の約 65.4 % を占めました。

ある調査用メールアドレス宛に 2 月に届いたフィッシングメールのうち、約 22.8 % がメール差出人に実在するサービスのメールアドレス (ドメイン名) を使用した「なりすまし」フィッシングメールであり、大きく減少傾向となりました。
送信ドメイン認証技術 DMARC のポリシーが reject(認証失敗したメールは受信拒否)または quarantine(認証失敗したメールを迷惑メールフォルダー等へ隔離) で、フィルタリング可能な なりすましフィッシングメールは約 10.9 %、DMARC ポリシーが none(認証失敗したメールも素通しして受信)または DMARC 対応していないドメイン名のなりすましフィッシングメールは約 12.0 % となりました。独自ドメイン名による非なりすましメール配信は約 77.2 % と急増し、そのうち DMARC に対応して認証成功 (dmarc=pass) したメールは約 24.4 % となりました。
逆引き (PTR レコード) 設定がされていない IP アドレスからの送信は約 65.6 % を占め、前月とほぼ同じ設定率となっています。一般的に不正メールは送信元に逆引き設定がされていないケースが多いため、そのようなメールを受け取らない大手メールサービスもあります。

フィッシング報告が急増した 2020 年以降は、毎年、旧正月の前後(前回は2023年1月)は報告が減る傾向がみられます。しかし過去の事例では、翌月は報告が増加する傾向にあるため、引き続き注意が必要です。また URL 件数については、前月に引き続き増加傾向となっています。
1 月に大量に報告がきていたブランドは、2 月は減少傾向となりましたが、代わりにしばらく報告が少なかったブランドが次々と狙われる状況が続きました。被害が発生したブランドは狙われ続ける傾向があるため、「事業者のみなさまへ」を参考に対策を進めてください。

フィッシング以外では、大手Eメールサービスのアカウントから送信された本文のない空メールの報告を多数、受領しています。送信ドメイン認証の普及等により、不正なメールが届きづらくなっているため、大手メールサービスを不正利用して送信するためのテストの可能性が考えられます。また、警察庁等をかたり、指定口座へ現金を振り込むよう脅迫するメールの報告を多数、受領しました。このようなメールを受信した場合は、すぐに最寄りの警察署へ情報提供してください。

事業者のみなさまへ

メールサービスを提供している通信事業者は、DMARC ポリシーに従ったメールの配信を行うとともに、迷惑メール対策を強化してください。また、ウェブメールやメールアプリなどでは送信ドメイン認証の検証状況を利用者が認識できるよう、検証結果に基づいた警告表示ならびに検証対象としたドメイン名の表示を検討してください。
オンラインサービスを提供している事業者は、DMARC レポートで正規メールが利用者に届いていることを確認しながら、最終的にポリシーを quarantine または reject に変更してください。

また、送信ドメイン認証で正規メールであると判別できるメールのみを読むよう、利用者に啓発してください。BIMI (Gmail、Apple iCloud メール および au メールアプリ等が対応)、 Yahoo!メールブランドアイコン、Yahoo!メールブランドカラー (送信ドメイン認証結果が正しいメールを色分けしメッセージを表示)、ドコモメール公式アカウント等へ対応すると、より利用者が正規メールを視認しやすくなります。届いた正規メールを信用するか否かも含め、判断は利用者自身が行う必要があります。 利用者の判断を助け、ブランドイメージを守るため、参考情報の「なりすまし送信メール対策について : 送信ドメイン認証に対応するメリット」を参考に、これらの技術やサービスへの対応を検討してください。

利用者への啓発については、サービスの専用アプリで注意喚起を行ったり、既存の啓発コンテンツや送信する正規メールでの案内を見直して、送信ドメイン認証で認証された正規メールと偽メールとの見え方の違いについて、十分に周知してください。利用者がその違いを知らなければ、効果はありません。また、フィッシングメールが届くということは、メールアドレス等の情報が、過去にどこかから漏えいしていることを意味します。 漏えいしたデータは消すことができないため、フィッシングメールが届いている利用者には、メールアドレスを新たに作成して登録変更することを推奨し、その際にユーザーに正規メールにアイコンやマークが表示される、安全なメールサービスを利用することを啓発してください。安全ではないメールサービスを使い続けると、再び被害に遭う可能性があります。

企業においては、メールセキュリティ製品や大手クラウドメールサービスは DMARC が利用できます。昨今、まったく関連がないブランドのフィッシングメールの差出人メールアドレスに企業のドメイン名が使われるケースが増えています。なりすまし送信によるドメイン名の不正利用やフィッシング、マルウェア攻撃への対策の一つとして、送受信ともに DMARC 正式運用 (ポリシーを reject または quarantine に設定し、受信時はポリシーに従ってメールを排除) に移行することを検討してください。

送信ドメイン認証を運用中の注意事項としては、メール配信サービスを追加したり、ネットワーク設備を統廃合するうちに、DNS に登録されている送信ドメイン認証の設定値が無効となる場合があります。特に多いのは SPF のエラーであり、さまざまなプロモーションメール配信を行う部門を持つ大手事業者で発生しているケースがよく見られます。定期的にチェックサイトで確認したり、DMARC レポートで送信メールが正常に判定されているか等、監視を行ってください。

不正メールを排除し、正規メールのみを確実に利用者に届けるため、大手メールサービスの Gmail が 2023 年 10 月に「メール送信者のガイドライン」を公開しています。 2 月から本ガイドラインに対応していないメールには、一時的なエラーによる受信遅延が発生していると思われます。また 4 月から、ガイドライン未対応メールの受信拒否が開始される予定ですが、一部の要件については、6月以降に施行予定となっています。2 月末、Email sender guidelines FAQ (英語版) に、施行内容について詳細が追記されているので参照してください。 メール送信ログの一時エラーや DMARC レポート、Gmail の Postmaster Tools を確認し、問題が見つかった場合は調査および改善を行うか、配信用メールサービスをより安全なサービスへ変更することも、検討してください。

スミッシング対策としては、「0005」で始まる国内モバイルキャリア共通の SMS 発信用の共通番号(共通ショートコード) 等を使うこと、正規メッセージにはURLは記載しないこと、認証コードのメッセージにその事由や警告を記載する等を検討し、利用者にはそれらを確認する等、啓発を行ってください。


利用者のみなさまへ

大量のフィッシングメールが届いている場合は、そのメールアドレスが漏えいしている事実を認識し、参考情報の「なりすまし送信メール対策について : 送信ドメイン認証に対応するメリット」を参考に、正規メールにアイコンが表示されるなどのフィッシング対策機能が強化されているメールサービスに新たにメールアドレスを作成し、オンラインサービスへ登録しているメールアドレスを切り替えていくことを検討してください。
フィッシングサイトに入力した情報を、犯罪者が裏で本物のサイトへ入力し、SMS 認証コード等も詐取して二要素認証を突破して、登録情報を変更したり、不正利用するケースが確認されています。身に覚えがない決済や登録変更の通知がきた場合は、送信ドメイン認証でアイコンが表示されている等、正規メールであるかを確認した上で、サービスのサポート窓口へ対応について相談してください。

普段からログインを促すようなメールや SMS を受信した際は、正規のアプリやブックマークした正規の URL からサービスへログインして情報を確認し、クレジットカード情報や携帯電話番号、認証コード、口座情報、ワンタイムパスワード等の入力を要求された場合は、入力する前に一度立ち止まり、本当に必要な手続きなのか、その入力先サイトが本物かを確認してください。特に初めて利用するサイトの場合は、運営者情報や問い合わせ先などを確認し、似たようなフィッシングや詐欺事例等がないか、確認するようにしてください。

Android スマートフォンの場合はスミッシングから不正アプリ (マルウェア等) のインストールへ誘導されることが多いため、日頃から SMS のリンクからのアプリのインストールは行わないよう、注意するとともに Google Play プロテクトや正規のウイルス対策アプリ等で不正なアプリ (マルウェア等) をインストールしていないか確認してください。


情報提供のお願い

フィッシングか否かの判断に迷う不審なメールや SMS を受け取った場合は、各サービス事業者の問い合わせ窓口やフィッシング対策協議会 (info@antiphishing.jp) まで、ご報告ください。 【報告方法】はこちら


今月の緊急情報

  イオンカードをかたるフィッシング (2024/02/02)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/aeoncard_20240202.html

  ゆうちょ銀行をかたるフィッシング (2024/02/07)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/japanpostbank_20240207.html

  内閣府を装うフィッシング (2024/02/07)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/mynaportal_20240207.html

  ビックカメラをかたるフィッシング (2024/02/14)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/biccamera_20240214.html

  JR西日本をかたるフィッシング (2024/02/27)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/westjr_20240227.html


参考情報

  なりすまし送信メール対策について : 送信ドメイン認証に対応するメリット
     https://www.antiphishing.jp/enterprise/domain_authentication.html#advantages

  Gmail : Email sender guidelines (2023年12月に要件がアップデートされた)
     https://support.google.com/mail/answer/81126?hl=en

  Gmail : Email sender guidelines FAQ (2024 年 2 月末「Sender guidelines enforcement」に多くの追記がなされた)
     https://support.google.com/a/answer/14229414?hl=en

  Gmail : メール送信者のガイドライン (英語版のアップデートが反映されていないため、英語版も参照してください)
     https://support.google.com/mail/answer/81126?hl=ja

  Gmail : Postmaster Tools を使ってみる
     https://support.google.com/mail/answer/9981691

  JPAAWG: Google & 米国Yahoo!の迷惑メール対策強化について
     https://connpass.com/event/304457/