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月次報告書

2024/04 フィッシング報告状況

2024年05月17日

フィッシング報告件数

2024 年 4 月にフィッシング対策協議会に寄せられたフィッシング報告件数 (海外含む) は、前月より 9,594 件増加し、106,757 件となりました。

フィッシングサイトの URL 件数

2024 年 4 月のフィッシングサイトの URL 件数 (重複なし) は、前月より 4,365 件減少し、39,863 件となりました。

フィッシングに悪用されたブランド件数

2024 年 4 月のフィッシングに悪用されたブランド件数 (海外含む) は、前月より 5 件増加し、92 件となりました。

総評

2024 年 4 月のフィッシング報告件数は 106,757 件となり、2024 年 3 月と比較すると 9,594 件、約 9.9 % 増加しました。
東京電力をかたるフィッシングの報告が急増し、報告数全体の約 19.5 % を占めました。次いで報告が多かった三井住友カード、Mastercard、Amazon、イオンカードをかたるフィッシングの報告をあわせると、全体の約 65.8 % を占めました。また 1,000 件以上の大量の報告を受領したブランドは 14 ブランドとなり、これらを合わせると全体の約 90.6 % を占めました。

分野別では、報告数全体に対する割合はクレジット・信販系 約 50.1 %、電力・ガス・水道系 約 20.8 %、EC 系 約 14.9 %、交通系 約 3.7 %、官公庁 約 2.9 %、行政サービス系 約 2.1 % となり、クレジット・信販系ブランドの割合が急増しました。また交通系や官公庁をかたるフィッシング報告が増加し、それ以外の分野は概ね減少傾向となりました。
フィッシングに悪用されたブランドは 92 ブランドとなり、クレジット・信販系 21 ブランド、金融系 15 ブランド、通信事業者・メールサービス系 12 ブランド、オンラインサービス系、EC 系それぞれ 6 ブランドとなりました。

SMS から誘導されるフィッシング (スミッシング) については、前月に引き続き、宅配便関連の不在通知を装う文面から Apple をかたるフィッシングサイトへ誘導するタイプの報告が最も多く、次いで電力会社、金融系、クレジットカード系をかたる文面の報告を多く受領しました。EC 系をかたる文面も報告が続いています。スミッシングへの対策については、「事業者のみなさまへ」「利用者のみなさまへ」を参考にしてください。

2024 年 4 月のフィッシングサイトの URL 件数は 39,863 件となり、2024 年 3 月と比較すると 4,365 件減少しました。
報告全体の URL(重複あり)の TLD 別では .com が約 53.5 %、次いで .ru 約 13.5 %、.cn 約 13.4 %、.top 約 3.3%、.ly 約 2.9 %、.net 約 2.2 %、.dev 約 2.1 % となり、前月と比較し .ru ドメイン名の悪用が急増、.com ドメイン名および .cn ドメイン名の悪用が多い状況が続いています。前月まで多かった .dev ドメイン名の悪用は激減しています。 重複なしの URL ではフィッシングメールに記載する「使い捨て」リダイレクト用 URL が全体の約 68.2 % を占め、前月より増加しています。ドメイン名別では .com の約 60.1 %、.ru はほぼすべてが「使い捨て」URLとして悪用されていました。

ある調査用メールアドレス宛に 4 月に届いたフィッシングメールのうち、約 36.7 % がメール差出人に実在するサービスのメールアドレス (ドメイン名) を使用した「なりすまし」フィッシングメールであり、3 月と比較して減少傾向となりました。
送信ドメイン認証技術 DMARC のポリシーが reject (認証失敗したメールは受信拒否) または quarantine (認証失敗したメールを迷惑メールフォルダー等へ隔離) で、フィルタリング可能な なりすましフィッシングメールは約 12.9 % と増加し、DMARC ポリシーが none (認証失敗したメールも素通しして受信) または DMARC 対応していないドメイン名のなりすましフィッシングメールは約 23.8 % と減少傾向となりました。 独自ドメイン名による非なりすましメール配信は約 63.3 % で半数以上を占めていますが、そのうち DMARC に対応して認証成功 (dmarc=pass) したメールは約 26.5 % と、非なりすましメールの送信ドメイン認証への対応率が上がっています。現状、利用者への連絡手段としてメールを送信する事業者は DMARC への対応がほぼ必須となっているため、DMARC 認証結果は正規メールか否かの判断基準の一つとなっています。
逆引き (PTR レコード) 設定がされていない IP アドレスからの送信は約 80.2 % を占め、急増しました。一般的に不正メールは送信元に逆引き設定がされていないケースが多いため、メールサービスを運用している場合は、そのようなメールを受け取らないことを検討してください。

3 月 に引き続き、4 月は大量のフィッシングメール配信が続き、報告数が増加しました。
移転シーズンを狙ったと思われる電力会社、ガス会社、水道局をかたって未納料金支払いを求めるフィッシングメールの報告を多数、受領しました。また e-Tax (国税電子申告・納税システム) をかたるフィッシングが 3 月以降急増しており、今後も注意が必要です。その他、クレジットカードの利用通知や月額請求のお知らせ、不正利用やログイン試行による利用制限の通知と本人確認依頼、メルマガや注意喚起など、本物メールをコピーしたと思われるような文面とデザインで送られてくるフィッシングメールも増えており、送信ドメイン認証により正規メールにのみ表示されるロゴ、アイコン、マーク等や S/MIME による電子署名がなければ判別が困難になっています。
2 月以降、しばらく報告が少なかったブランドが次々と狙われる状況が続いています。そのようなブランドの各報告数は少ないものの、被害が発生したブランドはそれ以降、しばらく狙われ続ける傾向があるため、「事業者のみなさまへ」を参考に対策を進めてください。

フィッシング以外では、事業者が送信した正規メールがフィッシングメールとして受信者に判断されており、多くの (誤) 報告が寄せられました。また「Verify your Apple ID email address.」という件名で、新規の Apple ID 作成のための認証コードが書かれたメールの報告を多数、受領しました。このメール自体は正規メールの可能性があり、第三者が他人のメールアドレスで Apple ID を作成しようとした可能性が考えられます。身に覚えのない認証コードが記載されたメールまたは SMS が届いた場合は、メールアドレスや電話番号が不正利用されようとしている可能性があるため、十分にご注意ください。
また 4 月は仮想通貨での支払いを要求する脅迫メール (セクストーションメール) の報告が多数、寄せらせました。このようなメールは過去に漏えいした情報をもとに送られているケースも確認されているため、長らくパスワードを変更していないサービスがある場合は、パスワード変更を行い、パスワードを使いまわししないよう、ご注意ください。


事業者のみなさまへ

メールサービスを提供している通信事業者は、DMARC ポリシーに従ったメールの配信を行うとともに、迷惑メール対策を強化してください。また、ウェブメールやメールアプリなどでは送信ドメイン認証の検証状況を利用者が認識できるよう、検証結果に基づいた警告表示ならびに検証対象としたドメインの表示を検討してください。
オンラインサービスを提供している事業者は、DMARC レポートで正規メールが利用者に届いていることを確認しながら、最終的にポリシーを quarantine または reject に変更してください。

また、送信ドメイン認証で正規メールであると判別できるメールのみを読むよう、利用者に啓発してください。BIMI (Gmail、Apple iCloud メール および au メールアプリ等が対応)、 Yahoo!メールブランドアイコン、Yahoo!メールブランドカラー (送信ドメイン認証結果が正しいメールを色分けしメッセージを表示)、ドコモメール公式アカウント等へ対応すると、より利用者が正規メールを視認しやすくなります。届いた正規メールを信用するか否かも含め、判断は利用者自身が行う必要があります。利用者の判断を助け、ブランドイメージを守るため、参考情報の「なりすまし送信メール対策について : 送信ドメイン認証に対応するメリット」を参考に、これらの技術やサービスへの対応を検討してください。

利用者への啓発については、サービスの専用アプリで注意喚起を行ったり、既存の啓発コンテンツや送信する正規メールでの案内を見直して、送信ドメイン認証で認証された正規メールと偽メールとの見え方の違いについて、十分に周知してください。利用者がその違いを知らなければ、効果はありません。また、フィッシングメールが届くということは、メールアドレス等の情報が、過去にどこかから漏えいしていることを意味します。漏えいしたデータは消すことができないため、フィッシングメールが届いている利用者には、メールアドレスを新たに作成して登録変更することを推奨し、その際にユーザーに正規メールにアイコンやマークが表示される、安全なメールサービスを利用することを啓発してください。安全ではないメールサービスを使い続けると、再び被害に遭う可能性があります。

企業においては、メールセキュリティ製品や大手クラウドメールサービスは DMARC が利用できます。まったく関連がないブランドのフィッシングメールの差出人メールアドレスに企業のドメインが使われるケースが続いています。なりすまし送信によるドメインの不正利用やフィッシング、マルウェア攻撃への対策の一つとして、送受信ともに DMARC 正式運用 (ポリシーを reject または quarantine に設定し、受信時はポリシーに従ってメールを排除) に移行することを検討してください。

送信ドメイン認証を運用中の注意事項としては、メール配信サービスを追加したり、ネットワーク設備を統廃合するうちに、DNS に登録されている送信ドメイン認証の設定値が無効となる場合があります。特に多いのは SPF のエラーであり、さまざまなプロモーションメール配信を行う部門を持つ大手事業者で発生しているケースがよく見られます。定期的にチェックサイトで確認したり、DMARC レポートで送信メールが正常に判定されているか等、監視を行ってください。

不正メールを排除し、正規メールのみを確実に利用者に届けるため、大手メールサービスの Gmail が 2023 年 10 月に「メール送信者のガイドライン」を公開しています。2 月からガイドライン未対応メールには一時的なエラーによる受信遅延が発生し、4 月からは受信拒否が段階的に開始されており、一部の要件については 6月以降に施行予定となっています。 Email sender guidelines FAQ (英語版) に、メールの受信拒否の際に返るエラーコードについて追記されているので、Gmail にメールが届かない場合は参照してください。メール送信ログのエラーや DMARC レポート、Gmail の Postmaster Tools を確認し、問題が見つかった場合は調査および改善を行うか、配信用メールサービスをより安全なサービスへ変更することも、検討してください。

スミッシング対策としては、「0005」で始まる国内モバイルキャリア共通の SMS 発信用の共通番号(共通ショートコード) 等を使うこと、正規メッセージにはURLは記載しないこと、認証コードのメッセージにその事由や警告を記載する等を検討し、利用者にはそれらを確認する等、啓発を行ってください。


利用者のみなさまへ

大量のフィッシングメールが届いている場合は、そのメールアドレスが漏えいしている事実を認識し、参考情報の「なりすまし送信メール対策について : 送信ドメイン認証に対応するメリット」を参考に、正規メールにアイコンが表示されるなどのフィッシング対策機能が強化されているメールサービスに新たにメールアドレスを作成し、オンラインサービスへ登録しているメールアドレスを切り替えていくことを検討してください。
フィッシングサイトに入力した情報を、犯罪者が裏で本物のサイトへ入力し、SMS 認証コード等も詐取して二要素認証を突破して、登録情報を変更したり、不正利用するケースが確認されています。身に覚えがない決済や登録変更の通知がきた場合は、送信ドメイン認証でアイコンが表示されている等、正規メールであるかを確認した上で、サービスのサポート窓口へ対応について相談してください。

普段からログインを促すようなメールや SMS を受信した際は、正規のアプリやブックマークした正規の URL からサービスへログインして情報を確認し、クレジットカード情報や携帯電話番号、認証コード、口座情報、ワンタイムパスワード等の入力を要求された場合は、入力する前に一度立ち止まり、本当に必要な手続きなのか、その入力先サイトが本物かを確認してください。特に初めて利用するサイトの場合は、運営者情報や問い合わせ先などを確認し、似たようなフィッシングや詐欺事例等がないか、確認するようにしてください。

Android スマートフォンの場合はスミッシングから不正アプリ (マルウェア等) のインストールへ誘導されることが多いため、日頃から SMS のリンクからのアプリのインストールは行わないよう、注意するとともに Google Play プロテクトや正規のウイルス対策アプリ等で不正なアプリ (マルウェア等) をインストールしていないか確認してください。


情報提供のお願い

フィッシングか否かの判断に迷う不審なメールや SMS を受け取った場合は、各サービス事業者の問い合わせ窓口やフィッシング対策協議会 (info@antiphishing.jp) まで、ご報告ください。 【報告方法】はこちら


今月の緊急情報

  東京ガスをかたるフィッシング (2024/04/24)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/tokyogas_20240424.html

  Mastercard をかたるフィッシング (2024/04/24)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/mastercard_20240424.html


参考情報

  なりすまし送信メール対策について : 送信ドメイン認証に対応するメリット
     https://www.antiphishing.jp/enterprise/domain_authentication.html#advantages

  Gmail : Email sender guidelines (英語版)
     https://support.google.com/mail/answer/81126?hl=en

  Gmail : Email sender guidelines FAQ
     https://support.google.com/a/answer/14229414?hl=en

  Gmail : メール送信者のガイドライン (最新のアップデートが反映されていないため、英語版も参照してください)
     https://support.google.com/mail/answer/81126?hl=ja

  Gmail : Postmaster Tools を使ってみる
     https://support.google.com/mail/answer/9981691

  JPAAWG: Google & 米国Yahoo!の迷惑メール対策強化について
     https://connpass.com/event/304457/