~ フィッシングとは実在する組織を騙って、ユーザネーム、パスワード、アカウントID、ATMの暗証番号、クレジットカード番号といった個人情報を詐取する行為です ~

HOME > 報告書類 > 月次報告書 > 2022/12 フィッシング報告状況

月次報告書

2022/12 フィッシング報告状況

2023年01月06日

フィッシング報告件数

2022 年 12 月にフィッシング対策協議会に寄せられたフィッシング報告件数 (海外含む) は、前月より 4,730 件減少し、65,474 件となりました。

フィッシングサイトの URL 件数

2022 年 12 月のフィッシングサイトの URL 件数 (重複なし) は、前月より 10,304 件減少し、13,810 件となりました。

フィッシングに悪用されたブランド件数

2022 年 12 月のフィッシングに悪用されたブランド件数 (海外含む) は、前月より 9 件減少し、78 件となりました。

総評

2022 年 12 月のフィッシング報告件数は 65,474 件となり、2022 年 11 月と比較すると 4,730 件減少しました。
Amazon をかたるフィッシングの報告が前月に引き続き急増し、報告数全体の約 51.7 % を占めました。次いで報告が多かったイオンカード、ETC 利用照会サービス、オリコ、えきねっと、国税庁をかたるフィッシングの報告をあわせると、全体の約 82.2 % を占めました。また、1,000 件以上の大量の報告を受領したブランドは 9 ブランドあり、これらで全体の約 89.9 % を占めました。
分野別では、EC 系は報告数全体の約 54.2 %、クレジット・信販系 約 26.1 %、オンラインサービス系 約 6.5 %、 交通系 約 5.6 %、省庁 約 3.6 %、金融系 1.8 %となりました。
フィッシングに悪用されたブランドは 78 ブランドでした。クレジット・信販系 20 ブランド、金融系 10 ブランド、通信事業者・メールサービス 10 ブランド、EC 系 8 ブランドとなりました。

SMS から誘導されるフィッシング (スミッシング) については、今年 8 月から報告が続いている国税庁をかたる文面のものが、12 月も多く報告されました。また宅配便関連の不在通知を装う文面から Apple をかたるフィッシングサイトへ誘導するタイプや、モバイルキャリアをかたる文面の報告が増えました。 その他、クレジットカードブランドやオンラインサービス、Amazon をかたる SMS 文面も報告されています。Android スマートフォンの場合はスミッシングから不正アプリ (マルウェア等) のインストールへ誘導されることが多いため、日頃から SMS のリンクからのアプリのインストールは行わないよう、注意するとともに Google Play プロテクトや正規のウイルス対策アプリ等で不正なアプリ (マルウェア等) をインストールしていないか確認してください。

大量のドメインとサブドメインを組みあわせた URL を使用した攻撃は 12 月も続きましたが 11 月に引き続き減ってきており、報告数および URL 件数全体の減少に繋がっています。 短縮 URL や DDNS サービスを経由して誘導されるフィッシングの報告は、約 41.1 % となり多い状況が続いています。スマートフォンユーザーを狙い、モバイルネットワーク以外からは見れないフィッシングサイトもあるため、対応する際には注意が必要です。
報告された URL 全体の TLD 別では短縮 URL によく使われる .ly が 約 25.0 % と増加し、次いで .top が約 22.4 %、DDNS サービスでよく使われる .org が約 16.1 %、.com 約13.1 %、.shop 約 6.1 %、.cn 約 6.0 %、.icu 約 3.2 % となりました。

また、フィッシングサイトの URL を QR コードにしてメールに埋め込んだフィッシングメールが増えています。いつもと違い、QR コードからサービスへのアクセスを促すメールが来た場合は不正なメールの可能性が高いので注意してください。その他には、フィッシングメールからキャッシュレス決済の正規サービスへ誘導し、送金させる手口の報告が来ています。メール内のリンクから決済サービスの認証画面に誘導された場合は、一度立ち止まり、いつもの決済方法と違う点がないか等、内容をよく確認してください。

ある調査用メールアドレス宛に 12 月に届いたフィッシングメールのうち、約 85.7 % がメール差出人に実在するサービスのメールアドレス (ドメイン) を使用した「なりすまし」フィッシングメールであり、多い状況が続いています。
送信ドメイン認証技術 DMARC により排除 (ポリシーが reject または quarantine) できるなりすましフィッシングメールは 63.0%、DMARC ポリシーが none または DMARC 対応していないドメインのなりすましフィッシングメールは 23.5 %、独自ドメインが使われるなど、送信ドメイン認証で判別ができないフィッシングメールは約 13.5 % となりました。 DMARC ポリシーを reject または quarantine に変更したブランドはフィッシング報告が減っており、DMARC 対応していない、または DMARC ポリシーが none のままで、なりすましフィッシングメールを受信者に配信する、という設定で運用し続けているブランド (ドメイン) は、なりすましメールによるフィッシングの標的となっています。

調査用メールアドレスへ配信されたフィッシングメールの送信元 IP アドレスの調査では、CN の通信事業者からの大量配信が約 88.0 % となり、前月に引き続き CN からの配信が多い状況が続きました。また、US の大手クラウドサービスからのフィッシングメール配信が増加しました。


事業者のみなさまへ

フィッシングメールの報告の多くは、受信時に DMARC ポリシーに従ってメールをフィルターしていないサービスの利用者から来ています。 メールサービスを提供している通信事業者は、DMARC 検証+迷惑メールフィルターを利用者へ提供し、利用を促してください。
オンラインサービスを提供している事業者は最低限 SPF と DMARC でドメインを保護してください。Gmail、Yahoo! メール、Outlook、ドコモ、Apple iCloud メールなど、大手メールサービスはすでに送信側の DMARC ポリシーに従ってなりすましメールを排除しており、一般的な消費者の約 7 割以上がカバーされていると考えられます。なりすましメールは一般消費者には本物と区別ができないため被害が発生しやすく、DMARC ポリシーを quarantine または reject で運用すると、なりすましメールが届かなくなるので、被害抑制に効果があります。なお、DMARC ポリシーが none のモニタリングモードでは、受信側メールサービスはなりすましメールをフィルタリングできません。 DMARC レポートを分析し、正規メールが DMARC 検証を pass していることを確認しながら、ポリシーを quarantine または reject に変更してください。pct パラメーターを 1 から 100 へ少しずつ増やしていくと、ゆるやかな適用が可能となります。

企業においては、メールセキュリティ製品や大手クラウドメールサービスは DMARC が利用できます。なりすまし送信によるフィッシングやマルウェア攻撃への対策の一つとして、送受信ともに DMARC Enforcement (ポリシーを reject または quarantine に設定し、受信時はポリシーに従ってメールを排除) することを検討してください。

送信ドメイン認証を運用中の注意事項としては、メール配信サービスを追加したり、ネットワーク設備を統廃合するうちに、いつのまにか DNS に登録されている設定値が不適切になっているなど、正常に機能していないケースが時々見られます。特に多いのは SPF のエラーです。SPF は DNS Lookup が 10 回という制限があり、メール配信にさまざまな外部サービスを使っている場合、SPF レコードに include 等を追加していった結果、この制限値を超えて SPF がエラーとなるケースがよく発生します。また include 先が無くなった場合にもエラーとなります。 SPF を設定している場合は正常に機能しているか、DNS への登録値が適切であるかなど、定期的にチェックサイトで確認したり、監視を行ってください。


利用者のみなさまへ

現時点で大量のフィッシングメールを受信している利用者は、そのメールアドレスが漏えいしている事実を認識し、正規メールにアイコンが表示されるなどのフィッシング対策機能が強化されているメールサービスに新たにメールアドレスを作成し、オンラインサービスへ登録しているメールアドレスを切り替えていくことを検討してください。
フィッシングサイト経由などで漏えいしてしまった携帯電話番号や個人情報をもとに、さまざまなサービスへログインしようとしたり、キャリア決済やキャッシュレス決済サービスを不正利用するケースが報告されています。 身に覚えがないタイミングで認証コード通知 SMS などが届いた時は、パスワード変更したり、決済サービスの使用履歴などを確認してください。

また、普段からログインを促すようなメールや SMS を受信した際は、正規のアプリやブックマークした正規の URL からサービスへログインして情報を確認し、クレジットカード情報や携帯電話番号、認証コード、口座情報、ワンタイムパスワード等の入力を要求された場合は、入力する前に一度立ち止まり、本当に必要な手続きなのか、その入力先サイトが本物かを確認してください。特に初めて利用するサイトの場合は、運営者情報や問い合わせ先などを確認し、似たようなフィッシングや詐欺事例等がないか、確認するようにしてください。


情報提供のお願い

フィッシングか否かの判断に迷う不審なメールや SMS を受け取った場合は、各サービス事業者の問い合わせ窓口やフィッシング対策協議会 (info@antiphishing.jp) まで、ご報告ください。 【報告方法】はこちら


今月の緊急情報

  ソフトバンクをかたるフィッシング (2022/12/01)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/softbank_20221201.html

  オリコをかたるフィッシング (2022/12/09)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/orico_20221209.html

  ビューカードをかたるフィッシング (2022/12/21)
     https://www.antiphishing.jp/news/alert/viewcard_20221221.html


参考情報

  なりすまし送信メール対策について
     https://www.antiphishing.jp/enterprise/domain_authentication.html