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インタビュー

第12回:サクラを使ったメール詐欺が増加している―国民生活センター

2010年11月08日

今回の「フィッシング対策の現場から」は、国民生活センターを取材した。同センターは、消費者トラブル全般に関する国民への注意喚起や相談受付などがメインの業務であり、フィッシングに関して専用の相談窓口を設けているわけではない。しかし、振り込め詐欺のような金融犯罪に関するものやインターネットサービスに関する相談も寄せられていることから、フィッシング対策に生かせる情報や、今後共有すべき情報などが得られるかもしれないということで、インタビューをお願いした。 対応してくれたのは、国民生活センター 総務部 企画調整課 課長補佐 林大介氏、相談部 調査役補佐 浦川有希氏、および同主事安藤健介氏の3名だ。(左から)

 

国民生活センターとは

協議会:国民生活センターという名前を聞いたことがある人は多いと思いますが、具体的な業務内容の詳細を知っている人は少ないかもしれません。まずは、国民生活センターの業務の概要を教えていただけますか。

 

林氏:国民生活センターの主な業務は次の6つとなります。①消費者からの苦情相談の受付・対応業務、②全国の消費生活センターに寄せられる相談情報を収集・分析し、消費者等に対して注意喚起を行う業務、③広報・啓発業務、④商品テストに関する業務、⑤研修および資格認定に関する業務、⑥裁判外での紛争解決手続き(ADR)に関する業務です。

①苦情相談の受付・対応業務に関しては、消費者からの相談を直接受け付ける「直接相談」のほか、「経由相談」と言って、各地の消費生活センターに対して相談の処理方法に関するアドバイスを行うものがあります。

②相談情報の収集・分析・提供業務に関しては、PIO-NET(Practical Living Information Online Network System)というシステムによって、全国の消費生活センターに寄せられたすべての相談情報を一括して蓄積・管理しています。その保有情報は1,000万件を超えています。蓄積された情報は、消費者被害の防止のための注意喚起や、行政機関等への制度の改善要望、各地の消費生活センターにおける相談処理への活用等の目的で利用されています。

③広報・啓発業務では、消費者への注意喚起のために行う記者説明会(月2回程度)、消費生活相談員や国民向けの情報誌の発行、障がい者や高齢者、子育て世帯向けのメールマガジンの配信、消費者向けの講座などを行っています。

④商品テスト業務は、各地の消費生活センターからの依頼によってテストするものと、PIO-NET等の情報から国民生活センターが独自に判断した商品を自主的にテストするものの2通りあります。後者の例としては、新型インフルエンザ対策用のマスクの防菌効果のテスト、自動車のフロアマットの安全性テスト、電子タバコのニコチンテストなどがあります。テスト結果は記者発表を通じて消費者に注意喚起したり、事業者や業界、関係行政機関等に改善要望を行っています。

⑤研修業務では、全国の消費生活相談センターに勤める相談員のスキルアップのための研修や、相談員の資格認定などを行っています。相談員資格の合格率は2~3割程度です。

⑥ADRは、裁判所の訴訟手続きによらずに、消費者と事業者の間に立って、トラブルに関する和解の仲介や仲裁を行うものです。ADRに関する業務は、国民生活センターからは独立した委員会(紛争解決委員会)によって運営されています。

 

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協議会:PIO-NETは、メーカーのコールセンターのナレッジベースのようなものと考えればよいですか。

 

安藤氏:相談情報をデータベース化しているという点では近いと思います。しかし、特定メーカーやプロバイダ等のいわゆるコールセンターのように、特定の商品やサービスに特化したデータベースではないため、事例の検索や必要なデータを抽出するために、ちょっとしたコツがいります。Webブラウザベースのインターフェイスで以前の端末より使いやすくなっていますが、相談される製品やサービスがあらゆる分野に広がるので、画一的なパターン化が難しいようです。

 

出会い系は女性もターゲットにシフト

協議会:国民生活センターに寄せられる相談の動向はどうでしょうか。

 

浦川氏:国民生活センターに相談する層は、年齢では20~40歳代、職業では給与生活者や家事従事者が多いというのがひとつの傾向です。70歳代以上の高齢者も増えています。また、今年から土日祝日相談を始めたのですが、相談者の約半数が10歳代~30歳代の世代であり、給与生活者から多くの相談が寄せられています。
2009年度の統計データが発表されていますが、同年度の相談件数はおよそ90万件ありました。相談件数全体としては、2005年度以降は減少傾向ですが、2009年度は2008年度と比べて油脂関係、賃貸アパート、株などの相談が増えています。油脂関係というのは、特定保健用食品の製造が中止されたという事案によるもので、2009年特有の現象といえるものでしょう。減っているのはサラ金・フリーローン関係の相談、エステティックサロンの相談などです。

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協議会:インターネットに関係するサービスについての相談はどうでしょうか。

 

浦川氏:たとえば、架空請求の被害は2004年にピークを迎えて、その後は減少傾向にあります。出会い系サイトの相談は依然として寄せられていますが、最近では、女性とメールをやりとりする事で有料のポイントを購入させるパターンが減り、芸能人のマネージャを騙り、「芸能人の話し相手になってくれ」と頼んで有料ポイントを使わせるパターンや「身寄りのない他人の遺産を相続させるから手続きをしろ」というパターンが増えています。どちらも、そのために直接代金や手数料を請求するのではなく、メール交換に必要なポイントを購入させます。インターネットで知り合ったメール交換の相手方を簡単に信用しないことが大切です。そして、これらの被害者は7:3で女性が多くなっています。未成年者からの相談もあります。

 

安藤氏:PCに関連するものでは、不審なプログラムをダウンロードしてしまったり、怪しいサイトをクリックしているうちに、ウイルス感染したような画面が表示されたり、有料サイトの請求書に画面が埋め尽くされたりして相談してくる人が増えています。画面を元通りに復旧させるために、金銭の振り込みを要求されますが、このような不審なメール、ウイルス感染、ネット上の架空請求については無視し、PCの復旧方法については、IPAのホームページを紹介し、参照してほしいとお願いしています。

 

浦川氏:そのほか、子供が勝手にケータイゲームの有料アイテムを購入してしまった、オークションサイトのトラブル(壊れている、商品が届かない)、ネットショップでのトラブルなどの相談も受けています。

 

安藤氏:掲示板、SNSでの誹謗中傷やプライバシー問題は、警察、弁護士の範疇ですが、事案によってどこが扱うかは明確でないので処理が難しい問題です。

 

関係省庁や関連機関との連携は重要

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協議会:そのほか、対応で連携をとっている機関や組織はありますか。

 

林氏:昨年(2009年)9月に消費者庁が発足しました。消費者庁は、消費者行政の司令塔として、一定の法的権限を持って法律の執行を行ったり、政策や法律制定の検討などを行います。これに対して国民生活センターは、消費者行政の中核的実施機関として、相談、情報、テスト、研修等の各種業務を実施しています。
消費者から寄せられる相談は、多岐にわたり深刻なものも少なくありません。国民生活センターと消費者庁は、日々緊密に連携しながら消費者被害の防止・救済に取り組んでいます。また、経済産業省や警察をはじめとする関係省庁との協力も強化しています。こうした連携の成果として、国民生活センターからの情報提供が発端となって関係省庁による行政処分等が行われることもあります。

 

 

協議会:最後に、フィッシング被害や相談がセンターに寄せられることはありますか。

 

安藤氏:不審なメールに関する相談の中に、フィッシングの誘導メールが含まれている可能性はあるので、おそらくゼロではないと思います。しかし、把握している範囲では、フィッシングの相談に直接対応したことはないと思います。

 

協議会:事業者との連絡や調整、海外サイトへの連絡など、フィッシング対策協議会の活動に通じる部分があり、その問題点も類似しているようですね。インターネットが生活に密着するにつれ、フィッシングやネット上のトラブル対応には、我々のような機関の連携が今後重要になりそうですね。本日はお忙しいところありがとうございました。